If it were done when ‘tis done, then ‘twere well
It were done quickly: if the assassination
Could trammel up the consequence, and catch
With his surcease success; that but this blow
Might be the be-all and the end-all here,
もし、やってしまってそれですべて決着がつくのなら、
今すぐやったほういいだろう、
もし、暗殺で一切のけりがつくなら、
それで王座につけるのなら、
この世のこの一撃で、一切合財の始末がつくわけだ
「マクベス」第1幕第7場
と、独白したのかもしれない。
Methought I heard a voice cry ‘Sleep no more!35
Macbeth does murder sleep’, the innocent sleep,
Sleep that knits up the ravell’d sleave of care,
The death of each day’s life, sore labour’s bath,
Balm of hurt minds, great nature’s second course,
Chief nourisher in life’s feast,–
「もはや眠るな、マクベスは眠りを殺した」
と叫ぶ声を聞いた気がする、無垢の眠り、
気苦労のもつれた糸をほぐして編むのが眠り、
眠りは、日々の生活のなかの死、労働の痛みを癒す入浴、
傷ついた心の軟膏(なんこう)、自然から賜ったご馳走、
人生の饗宴の主たる栄養源だ。「マクベス」第2幕第2場
今回は、二代ほど前の人物に遡ることにする。アンリ四世は、気質の面では、プロテスタント信仰に厳格であった母のナバラ女王ジャンヌ・ダルブレではなく、むしろ祖母のそれを受け継いだようだ。その祖母、マルグリット・ド・ナヴァール Wikipediaをめぐる人間関係も相当に複雑であったらしい。話題にしたいのは、四人の人物である。まず、マルグリッド、彼女は、フランソア一世 Wikipediaの姉であった。その母である、ルイーズ・ド・サヴォワ Wikipedia、一時期は、マルグリッドと相思相愛であった、シャルル3世 (ブルボン公) Wikipedia、マルグリッドに横恋慕するボニヴェ大提督 Wikipedia 英語版との人物配置である。愛憎関係は、これにとどまらず、ルイーズ・ド・サヴォワは、寵臣として、ボニヴェを重んじる一方、年齢の差をこえて、ブルボン公に、思いを寄せるが、かなわぬとならば、「可愛さ余って憎さ百倍」で、公をフランス王朝を裏切らせ、神聖ローマ帝国カール五世 Wikipedia側に寝返させた。母親のルイーズは、後のシャルル九世の母、カテリーナ・ド・メレディスのポジションに似る、当時の政局の黒幕的存在だったことを始めとして、この四人の丁々発止はなかなかに面白いが、結末はあっけなく、ボニヴェは、1525年、フランソア一世が捕虜となった、パヴィアの戦い Wikipediaで戦死。ブルボン公は、その2年後、ローマ劫掠直前に、狙撃され落命した。これがその後のカール五世軍の劫掠の引き金になったらしい。
堀田善衛の文章に「日本の代議士が、ローマ帝国廃墟跡を見て、『イタリアの戦後復興はまだまだじゃのう』と言ったとか、言わなかったとか…」というのがあったと記憶する。、代議士の蒙昧は、ひとまず置くとして、永遠の都ローマは、近世に入り、廃墟と化すほどの軍隊の侵略をうけた。ローマ劫掠 Wikipedia(ローマごうりゃく、イタリア語: Sacco di Roma)古代にも、ローマ帝国滅亡時には、ローマ略奪(ローマりゃくだつ、イタリア語: Sack di Roma)もあったが、1527年の劫掠も、それに劣らぬ規模であったので、代議士のトンチンカンな「誤解」も生まれたのだろう。