日本人と漢詩(065)

◎空海(弘法大師)
空海 後夜聞佛法僧鳥
閑林獨坐草堂曉
三寶之聲聞一鳥
一鳥有聲人有心
聲心雲水倶了了

読み下し文、語釈は上記リンクを参照のこと。空海の漢詩では有名な作品らしいが、どうも取ってつけたような味わいで、正直なところ詩趣は薄い。それより、
靑陽一照御苑中 青陽一たび照らす御苑の中
梅蕊先衆發春風 梅蕊《ばいずい》衆に先んじて春風に発《ひら》く
春風一起馨香遠 春風一たび起こりて馨香《けいこう》遠《あまね》し
華萼相暉照天宮 華萼《かがく》相暉《あいかがや》きて天宮を照らす

春の太陽が御苑のなかを御苑の中をひとたび照らせば
梅のつぼみも何よりも先に春風とともに花ひらく
春風がひとたび吹けば
花の香りは遠くへとどき
花も萼《がく》も輝き合って、天宮を照らす

字の繰り返しが鼻に突き、詩の背景も「貴人」の感覚の域をでないが、まだ「宗教臭」は薄く、自然な感じがする。

空海は、今の世にも生き仏となり、高野山では三度の飯を給仕しているらしい。そこでの掛け声は…
ーなにか、くうかい?
ー今日は、スパゲッティでカルボナーラが食べたいなあ!
と空海は言ったか言わなかったとか。(お後がよろしいようで!)
【参考】
阿部龍樹「空海の詩」

写真は、高野山壇上伽藍。(Wikipedia より 663highland – 投稿者自身による作品, CC 表示 2.5, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=8349450による)

サーバー再構築覚書(008)ーNFS(ネットファイルシステム)の構築

設定ファイルなど、クラッシュ時に必要不可欠のファイルを外付けHDにコピーし、復旧をスムーズにするため、各サーバーの日々のバックアップが必要です。そのファイル操作を簡便にするため、NFS を構築しました。
・外付けHDは、十分な容量を確保するとともに、MS-Windows や、MacOS のファイルシステムではなく、Linux の ext4 でフォーマットしておきます。

・以下、「サーバーワールド」からの図解を改変。

+----------------------+               |               +----------------------+
| [    NFS Server    ] |XXX.XXX.XXX.210|YYY.YYY.YYY.212| [    NFS Client    ] |
|   nishinari.or.jp    +---------------+---------------+   yyy.nishinari.or.jp|
|                      |                               |                      |
+----------------------+                               +----------------------+

・NFS サーバーの設定

# apt -y install nfs-kernel-server

# jed /etc/idmapd.conf
# 6行目:コメント解除して自ドメイン名に変更
Domain = nishinari.or.jp

外付けHDは、USB接続すると、Ubuntu側で、自動認識し、/media/zzzz/1….. にマウントします。

# jed /etc/exports
# 最終行にマウント設定を記述
# 例として [/media/zzzz/1..... ] を NFS 共有に設定
/media/zzzz/1..... xxx.xxx.xxx.208/28(rw,no_root_squash)


# systemctl restart nfs-server

・NFS クライエントの設定

# apt -y install nfs-common


vi /etc/idmapd.conf
# 6行目:コメント解除しドメイン名変更
Domain = nishinari.or.jp

マウントするには、

mount -t nfs nishinari.or.jp:/media/zzzz/1..... /mnt

起動時から、自動的にマウントするには

# jed /etc/fstab
# 最終行に追記:マウントするホームディレクトリをNFSサーバーのものに変更
nishinari.or.jp:/media/zzzz/1..... /mnt nfs defaults 0 0

確認するには

# df -hT
Filesystem Type Size Used Avail Use% Mounted on
tmpfs tmpfs 1.6G 1.7M 1.6G 1% /run
/dev/sda3 ext4 xxxG 20G xxxG xx% /
...
nishinari.or.jp:/media/zzzz/1..... nfs4 x.xT XXG x.xT xx% /mnt

実際には、/mnt/nfs にNFS(「共有フォルダー」が準備されています。

# ls -l /mnt/nfs/
合計 20
...
drwxr-xr-x 6 root root 4096 11月 28 14:05 takeru
...
drwxr-xr-x 3 root root 4096 12月 27 23:24 zephyr

日本人と漢詩(064)

◎蠣崎波響

蠣崎波響(1764~1826)は、蝦夷地・松前藩第12代藩主松前資廣《すけひろ》の五男、家老職のとき、松前藩転封の憂き目に会い、蝦夷地への復帰に努力した。独特のアイヌ画など絵画にも堪能し、またその頃の詩人などとも広く交友があった。(Wikipedia) 彼の漢詩より、歳暮から正月にかけての詩を数首。画像は「梅花十詠」の表紙。並大抵の労苦ではなかったはずだが、淡々とわが生を振り返る佳詩である。

戊寅歳暮 七絶
書帙堆中心事虚 書帙(しょちつ)うずたかきうち 心事 むなし
官忙老却逐居諸 官忙 老却して 居諸を逐う
今年亦是已経過 今年もまたこれ已に経過す
五十何能読五車 五十にして 何ぞよく五車を読まん

うずたかく積んだ書物のなかで心中はむなしく感じる
公務多忙でめっきり老いてしまいいたづらに月日をおいかけるだけ
今年もまたすでに過ぎてしまった
五十歳にしてどうして五台の車に積んだような書物が読むことができようか

注:戊寅 文政元年(1818年)波響55才 居諸 詩経に「日居月諸」(日よ月よ)とある

歳晩即時 七律

三百六旬如奔輪 三百六旬 奔輪の如く
閑中忙裏忽移巡 閑中忙裏 忽ちまち移り巡る
光陰難逐磨針業 光陰 逐いがたし 磨針の業
活計何愁鋤鏟貧 活計 何ぞ愁えん 鋤鏟の貧
泉脈未通前筧凍 泉脈は未だ通ぜず 前筧(ぜんけん) 凍れるに
梅唇先放半枝春 梅唇は先に放して 半枝の春
不知得得老期近 得々たる老期の近きを知らず
歳歳待花与鳥均 歳々 花を待つこと鳥と均(ひと)し

一年三百六十日は回る車輪のようで
暇でも忙しくてもあっという間に経ってしまう
あくせくとした日常の身を削るような用向きに時の流れが容赦なく過ぎてゆくが
鋤と鍬の農耕生活なら貧乏でも構わない
水の流れはまだ通じておらず庭先のかけいも凍ったままだが
梅の花がまず咲いて枝の半分だけが春になった
悠々自適の老後の生活が近いともしらず
年ごとに鳥と一緒になって花を待っている身である

除夜 二首
其一 五絶
歳酒迎賓酌 歳酒 賓を迎えて酌み
塵忙忘酔中 塵忙 酔中に忘る
五更春信動 五更 春信 動き
門外柳枝風 門外に 柳枝の風

年忘れの酒を来客と酌み交わすと
日頃の忙しいのも酔って忘れる
明け方には春の便りが届いたよう
門の外には柳の枝に吹く風の音

其二 七絶
椒酒避寒垂暁天 椒酒(しゅくしゅ) 寒を避けて 暁天になんなんとす
梅風馥郁遶窓前 梅風 馥郁(ふくいく)として 窓前をめぐる
残燈不滅猶明影 残燈はきえず 猶お明影あり
明影堂中遇一年 明影の堂中 一年にあう

寒さよけにお屠蘇を飲んで明け方になってきた
梅の香の風はふくいくとして 窓の前をめぐっている
昨年の残りの灯火は消えずになお明るく影を照らす
その光と影の部屋で新しい年に出会った

【参考】
・中村真一郎「蠣崎波響の生涯」
・高木 重俊「蛎崎波響漢詩全釈―梅痩柳眠村舎遺稿」