南総里見八犬伝(022)

南總里見八犬傳第三輯卷之一第二十一回・序など
東都 曲亭主人 編次
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【見返】
里見八犬傳第三輯
曲亭馬琴あらはす/柳川重信畫
全五册
書肆/山靑堂

【目録】
南總里見八犬傳なんさうさとみはつけんでん第三輯だいさんしふ總目録さうもくろく
巻之壹 第二十一回
額藏がくざう間諜かんてふ信乃しのまつたうす。 犬塚いぬつか懐舊くわいきう青梅あをうめる。
同巻 第二十二回
濱路はまぢひそか親族しんぞくいたむ。 糠助ぬかすけやみ其子そのこおもふ。
巻之貮 第二十三回
犬塚いぬつか遺託ゐたくうけひく。 網乾あぼしそゞろ歌曲かきよくる。
同巻 第二十四回
軍木ぬるでなかたちして荘官せうくわんく。 蟇六ひきろくいつはりて神宮かにはすなとりす。
巻之参 第二十五回
ぜうふくみて濱路はまぢ憂苦ゆうくうつたふ。 かんつげ額藏がくざう主家しゆうかかへる。
同巻 第二十六回
けんもてあそびて墨官ぼくくわん婚夕こんせきうながす。 さつしめして頑父ぐわんふ再醮さいぜうすゝむ。
巻之四 第二十七回
左母二郎さもじらうよる新人はなよめ豪奪ごうだつす。 寂寞じやくまく道人どうじんげん圓塚まるつか火定くわじやうす。
同巻 第二十八回
あたのゝしり濱路はまぢせつす。 うからみとめめて忠與たゞともふることかたる。
巻之五 第二十九回
雙玉さうぎよく相換あひかえ額藏がくざうるいる。 両敵りやうてき相遇あひあふ義奴ぎぬうらみむくふ。
同巻 第三十回
芳流閣はうりうかくせう信乃しの血戰けつせんす。 坂東ばんとう河原かはら見八けんはちゆうあらはす。

統計とうけい三十くわいその第一回だいいつくわいだい二十くわいいたりてはすで前板ぜんはん両輯りやうしふしるせり

【序文】書下し
八犬傳第三集敍 [著作堂]
門前に狂狗有れば、其酒沽れず。而れども主人はさとらず。猶且つ酒の沽れざるを恨めり。癡情是の若き者。之を衆人と謂ふ。衆人に淸濁有り。猶酒に醥與(と)醠と有るがごときなり。而してめる者は其の味淡薄。醉と雖醒易し。濁る者は其の味甘美にして。酩酊す。奚ぞ今を思ふ者之おほくして。後を懼るゝ者之寡きや。是の故に。瞿曇氏法を說て以地獄果天堂樂有りと爲(す)。是に於後を思はざる者懼る。又何ぞ耳を貴ぶ者之衆して。目を賤めざる者之寡きや。是の故に南華子物論を齋(ひと)しうして以爭訟をとゞめんと。是に於耳を貴ひ目を賤む者愧つ。然れども彼の寂滅之敎の若き。媚る者衆して。悟る者彌々寡し。むべなり。其媚る者は。口に經を誦すれども。其義を釋くこと能はず。其迷ふ者は。心に利益を祷れども。之を欲する所以を知らず。凡そ之の如き之禪兜。度すると雖其功有ること無し。昔者震旦に烏髮の善智識有り。因を推し果を辨し。衆生を誘ふに俗談を以し。之を醒すに勸懲を以す。其意精巧。其文竒絕。乃ち方便を經と爲。寓言を緯と。是を以其の美錦繍の如し。其甘きこと飴蜜の如し。蒙昧蟻附して去ること能はず。既にして有る所之煩惱。化して屎溺とり。遂に糞門を觧脫するときは。則覺ず奬善之域に到り暫時無垢之人と爲ると云ふ。亦竒ならずや。餘わかかりし自り愆て戲墨を事とす。然れども狗才馬尾を追て。於閭巷に老たり。唯其の勸懲に於。每編古人に讓らず。敢て婦幼をして奬善之域に到ら使んと欲す。嘗て著す所の八犬傳。亦其の一書なり。今其編を嗣こと三たびにして。刻まさに成らんとす。因て數行を簡端に題す。嗚呼狗兒の佛性。無を以字眼と爲。人は則媚て其尾を掉るを愛す。我は則誤て帝堯を吠んことを懼る。冀くは瞽者の爲めに。煩惱狗を獵て以一條の迷路を開かん。閱する者幸に其無根を咎ること勿れ。
文政元年九月盡日
簑笠漁隱 [馬琴][乾坤一草亭]

【序文】原文
八犬傳第三集敍 [著作堂]
門前有狂狗、其酒不沽。而主人不曉。猶且恨酒之不沽。癡情若是者。謂之衆人。衆人有淸濁。猶酒有醥與醠也。而淸者其味淡薄。雖醉易醒。濁者其味甘美。而酩酊矣。奚思今者之衆。懼後者之寡也。是故。瞿曇氏說法以爲有地獄果天堂樂。於是不思後者懼矣。又何貴耳者之衆。不賤目者之寡也。是故南華子齋物論以爲禁爭訟。於是貴耳賤目者愧矣。然若彼寂滅之敎。媚者衆。悟者彌寡矣。宜。其媚者。口誦經。而不能釋其義。其迷者。心祷利益。而不知所以欲之。凡如之之禪兜。雖度無有其功。昔者震旦有烏髮善智識。推因辨果。誘衆生以俗談。醒之以勸懲。其意精巧。其文竒絕。乃方便爲經。寓言爲緯。是以其美如錦繍。其甘如飴蜜。蒙昧蟻附不能去焉。既而所有之煩惱。化爲屎溺。遂觧脫糞門。則不覺奬善之域暫時爲無垢之人云。不亦竒乎哉。餘自少愆事戲墨。然狗才追馬尾。老於閭巷。唯於其勸懲。每編不讓古人。敢欲使婦幼到奬善之域。嘗所著八犬傳。亦其一書也。今嗣其編三而。刻且成。因題數行於簡端。嗚呼狗兒佛性。以無爲字眼。人則愛媚掉其尾。我則懼誤吠帝堯。冀爲瞽者。獵煩惱狗以開一條迷路。閱者幸勿咎其無根。
文政元年九月盡日
簑笠漁隱[馬琴][乾坤一草亭]

【口絵説明】
【口絵1】
犬山いぬやま道節どうせつ忠與たゞとも
田單燕ヲ破ル之日/火平原ヲ燎ク/阿難寂ヲ示ス之年/煙兩扞ヲ和ク
劍術の極秘は風の柳かな
犬飼いぬかひ見八けんはち信道のぶみち
【口絵2】
酢もあらばいざぬたにせん
網さかなえびとかにはの
舩で味噌すれ
荘客ひやくせう糠助ぬかすけ
大塚おほつか蟇六ひきろく
軒のつまに
あはひの貝の
片おもひ
もゝ夜つられし
雪のしたくさ
奴隷しもべ背介せすけ
簸上ひかみ宮六きうろく

南総里見八犬伝現代語訳サイト(第二十回)

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