南総里見八犬伝(005)

南総里見八犬伝巻之二第四回
東都 曲亭主人 編次
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小湊こみなと義實義よしさねぎあつ
笆內かきのうち孝吉讐たかよしあた

卻說義實主從かくてよしさねしゆうじゆうは、こゝの池、彼川かしこのかはと、ふちをたづね、たちて、みちよりみちに日をくらせば、白濱しらはま旅宿りよしゆくへかへらず、ゆき/\て長狹郡ながさのこふり自箸河しらはしかは涉獵あさるほどに、はや三日にぞなりにける。日數ひかずもけふを限りと思へば、こゝろしきり焦燥いらだつのみ、えものことにありながら、小鯽こふなに等しきこひだにも、はりにかゝるはたえてなし。千劒振神ちはやふるかみの代に、|彥火々出見尊ひこほほでみのみことこそ、うせにしはりもとめつゝ、海龍宮わたつみに遊び給ひけれ。又浦嶋うらしまの子は堅魚釣かつをつり、鯛釣たひつりかねて七日まで、家にもずてあさりけん、ためしに今も引く絲の、みだれ苦しき主從は、思はずもおもてをあはして、齊一嗟嘆ひとしくさたんしたりけり。

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