日本人と漢詩(046)

◎原采蘋、諸田玲子と李白


 NHK-FM 青春アドベンチャー「女だてら」は、昨日最終回となり、采蘋の宿願も大団円となった。原作では、その後日談もあり、李白と彼女の詩も紹介されている。だが、彼女の恋は、必ずしも成就成らず、ほろ苦い結末となっている。
別内赴徴三首 其三 内に別れて徴に赴く 三首  其の三 李白
翡翠為樓金作梯 翡翠《ひすい》楼と為《な》し 金梯《てい》と作すとも
誰人獨宿倚門啼 誰人《だれひと》か独宿して 門に倚《よ》りて啼《な》く
夜泣寒燈連曉月 夜泣きて寒燈《かんとう》 暁月《ぎょうげつ》に連なり
行行淚盡楚關西 行行《こうこう》涙は尽く 楚関《そかん》の西
 楚の西とあるので、嘆きの対象は蜀の国に居る人物との別れを詠ったものだろうか?采蘋は、郷里秋月藩を思っての仮託であろうか?
語釈と訳は
http://blog.livedoor.jp/kanbuniink…/archives/66702055.html
を参照のこと
別後聴雨 別後雨を聴く 原采蘋
雨蕭々兮四簷鳴 雨は蕭々として 四簷鳴く
燈耿々兮夢不成 燈は耿々として 夢成らず
身在天涯別知己 身は天涯にありて 知己と別る
千廻百転難為情 千廻百転 情と為しがたし
袖辺香残人更遠 袖辺香残り 人は更に遠く
不知何処聴斯声  知らず 何処に この声を聴かん
「愛しい人は 何処でこの雨の音を聴いているのか。天涯孤独の身 に雨音はもの寂しくしみいり、 未練はいつまでたっても消えそう にない……。」
 私事にわたるが、この間、漱石の胃潰瘍の話題も挿み、検診での胃のレントゲンから始まり、胃カメラの結果から内視鏡的切除まで、結構疾風怒濤の日々だった。結果は、ドラマのようなわけにはいたらかもしれないが、小団円くらいかもしれない。でも、入院中の傍らに采蘋が居たことは多とすべきだろう。
 図は、王運煕・李宝均「李白」(日中出版)から

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